「山形正宗」を醸す水戸部酒造は、山形県天童市で1898年に創業した蔵です。
現在の酒造りは、米作りから取り組む姿勢を前面に出しており、公式にも「米作りからの酒造り」を掲げています。
蔵の酒はすべて純米造りで、2010年には醸造用アルコールの使用を廃止。原料本来の旨みを表現しつつ、切れのある酒質を目標にしてきました。上槽には伝統的な「槽(ふね)」を使い、やさしい圧力で搾ることで、自然で雑味の少ない酒を目指しています。
山形正宗の核にあるのは、蔵が自ら掲げる「銘刀の切れ味」という言葉です。仕込み水には、山寺を源流とする奥羽山系の伏流水を使用し、硬度約120という比較的硬い水が、シャープで硬質な後口を形づくります。
一方で、食との相性も重視しており、和食に限らず幅広い料理とのペアリングを楽しめる酒を目指すのが、この蔵の基本姿勢です。伝統的な純米蔵でありながら、食中酒としての現代性を明確に備えた銘柄といえます。
「山形正宗 辛口 純米酒」は、山形県産・自社田産の出羽燦々を使い、精米歩合60%で仕込まれる通年商品です。辛口純米といっても、ただ淡く鋭いだけではありません。
取扱店の説明では、骨格のしっかりした旨さがあり、山形正宗らしい“ふくらみ”を持ちながら、後味はすっと切れる酒として紹介されています。
つまりこの酒の魅力は、辛さの表示以上に、米の旨味を残したうえでキレに着地させる設計にあります。飲み口は端正で、食事中でも味が崩れにくい一本です。
支持される理由は、飲み飽きしにくいことと、料理を引き立てる食中酒性能の高さにあります。実際、蔵元は食との相性を重視し、販売店でも「料理を引き立てる名脇役」と表現されています。
刺身や焼き魚のような和食はもちろん、塩気や旨味のある料理とも合わせやすいタイプです。派手な香りで押す酒ではなく、辛口でありながら旨味もほしい人、食事と一緒に日本酒を楽しみたい人に特に向いています。燗でも楽しめると案内されている点も、この酒の懐の深さを示しています。
一言でいえば、山形正宗 辛口 純米酒は「米の旨味を残しながら、刀のように後口を切る食中純米」です。辛口の名に頼らず、旨味とキレを両立させた、蔵の思想がよく表れた定番酒です。

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